だけど、どうしようもできなくて。
自分の無力さに苛立つ。
「好きだ」
海に届け、そう心の中で思いながら呟いた。
マフラーを抱きしめ、愛しさをこぼす。
俺はマフラーを首に巻いて、
駅前の時計の下で、海を待ち続けた。
とっくに待ち合わせ時間の10時は過ぎている。
そんなのわかってる。
だけど、待っていたかった。
心のどこかで、来てくれると思っていたから。
けれど、やはり海が来ることはなかった。
海の姿を見つけることはないまま、俺は灰色の空を見上げた。
「この想いを消すことも、諦めることも、俺にはできねぇよ…………」



