最後にそう笑顔で言えたのは、私のちっぽけなプライドのおかげだった。
私はそう言い残し、二人に背を向けて歩き出した。
「海……!」
陽介、今までありがとう。
大好きだったよ。
笹道さんと、幸せにね。
本当はこれくらい言いたかったのに、「バイバイ」としか言えなかった。
現実を受け止めたくなくて、早く逃げ出してしまいたくて。
涙が、流れ続けた。
陽介が言った「好き」も
陽介の笑顔が見たくて選んだプレゼントも
楽しみだった明日のデートも
全部全部、どこかへ捨ててしまいたい。
記憶から、消してしまいたい。
……もう、忘れてしまいたい。



