『もし何かあったら、遠慮せずに言ってね』
なぜか脳裏には、文化祭の時に空が言った言葉が過ぎっていた。
どうして今、思い出しているんだろう。
どうして声が出ないの?足が動かないの?
なんだか嫌な予感がする。
どうして…?
笹道さんは自分の腕を、陽介の腕と絡ませて歩いている。
嫉妬するなんて、おかしい。
笹道さんは人懐っこい性格で、あういうことをよくやる子。
文化祭の時、そうわかったじゃん。
なのにどうして、胸がこんなにざわめいているの?
「苺綺、離れろよ。ったく」
「いいじゃんー。陽介の隣、安心するんだもん」
陽介は呆れている様子だが、仕方ないなとため息を吐く。
笹道さんは可愛らしく微笑んで、陽介との距離をつめる。



