空の声は凛としていて、どこか怖い。
勘がいい空だけど、もう人を疑いたくないな。
「気をつけなよ、海」
「う、うん。わかった」
私はぎこちなく頷くが、やっぱり信じたい。
陽介のことも、笹道さんのことも。
笹道さんに裏表があるって、空は言いたいんだろうけど
本当にそうなのかな。
あの子犬のような人懐っこい性格に、嘘はないように思えるんだけど。
でも空がここまで言うんだもん。
その言葉を無視するわけにはいかない。
私は空の忠告を心の片隅に置いて、文化祭を楽しんだ。
「海」
「なに?」
「もし何かあったら、遠慮せずに言ってね」
空の表情は、どこか不安げで。
私は優しく微笑んで、「うん」と頷いた。



