私は深く深呼吸をして、鼓動を落ち着かせてから、息を吸った。
「どうしてなのだろう」
ステージに立つ私のところだけがスポットライトに照らされている。
体育館で行われているこの劇。
これを見に来ている人は結構いて、また心臓がバクバク高鳴る。
体育館は暗くて、よく見えない。
まるで、今の私のようだ。
不安になったこの気持ちは暗くなって、もう、何が正しいのか見えない。
「どうしてこの恋は、涙で溢れているのだろうか。
溺れていくことに抗っても、行き着く先は同じだとわかっているのに。
どうしても、この恋を忘れるなんて……できない」
そしてスポットライトが消え、プロローグが終わり、やっと本編が始まる。
恋の切なさも、嬉しさも、悲しみも、儚さも。
全部詰め込んだこのストーリー。
私はこれを読んで、最初は泣いてしまった。
どんな恋でも、切なくて。
どんな幸せも、脆くて。
私は、また見えなくなる。
恋とは、本当はどんなものなのか、わからなくなる。



