実は、ヒロインに恋をする役を演じるのは、凪雲くんなの。
なんか、変に緊張しちゃうんだよね。
凪雲くんが私に恋をする役なんて。
絶対ありえないことだし。
「頑張ろうね、海」
「そうだね、凪雲くん。頑張ろう!」
私は凪雲くんと笑顔でそう言った。
成功させなきゃ。
実はまだ、陽介にあの女の子が誰なのか、聞いていない。
聞くのが怖くて、逃げ続けている。
今日こそは、と毎日のように思っているけど、なかなか言葉が出ない。
そして、明日は陽介の誕生日。
不安な気持ちを持ち続けたまま、誕生日プレゼント、渡してもいいのかな?
そして、劇が始まった。
だんだんと幕が上がっていく。
最初はプロローグ。
私が一人でステージの真ん中に立ち、言葉を話すシーンから始まる。



