先ほど買った、キーケース。
私はそれを強く抱きしめた。
怖いよ、陽介。
二人の関係に亀裂が入りそうで、怖い。
――10月になった。
今日は、花丘高校の文化祭。
私のクラスでは、劇をやる。
脚本は、クラスの文芸部の子。
そして私は、その劇のヒロイン。
くじ引きで決めた配役で、私は見事アタリを引いてしまったのだ。
トホホ。
私がヒロインなんて、まったくもって似合わないのに。
劇の原作は『この恋、賞味期限切れ』。
その本には、なんか縁があるなぁ。
私はそう思いながら、セリフの確認をしていた。
私のクラスが行う劇は、『この恋、賞味期限切れ』のアレンジ版。
文芸部の子が、少しラブ要素をプラスして作ったんだ。



