ほんのひととき






あたしには友達はいる。
あたしの事を、友達と呼んでくれる人がいる。
それでも、その人達を心の底から信用する事が、出来なかった。
どっかで絶対あたしを敵に見てる。
人の心なんて見えない。
だからこそ、怖かった。
話をする時、いつしか主語が全部「自分」になっている事に気がついた。
そんな事にも気付けなかった。
必死だった。
離れて行ってしまうのが目に見えるようで。
怖かった。
周りの目を気にしてる自分がいた。
ちょっと前までは、自分らしく過ごせていたのにな。
でも、“らしく”って何だ……?
自分の事は、自分がよく分かってるなんてよく言うけど。
本当なのかな。
あたしは、自分を見失ってるのかな。

そんな時、またあなたを見かけた。
クラスメイトとおしゃべりしてる時だったか。
あなたは外で遊んでいた。
とても楽しそうに。
心の底からの笑顔だな、って直感的に思った。
あの人みたいに、笑ってみたい。
凄いなと思った。
楽しい時、体全体でそれを表現するのはなかなか出来ない。
難易度の高い技なんじゃないかってくらい。
少なくとも、あたしには出来なかった。
心底、そんな自分を呪った。
楽しい時に、笑うのは当たり前。
だから、あたしは小さい時から自分の存在に気付いてもらいたくて、大きな声を出して笑った。

明るく声を出していれば、少し楽しくなるような気がしていた。
そばにいるのに、気付いてもらえない悲しみを、大きくなった今でも恐れてた。
夜遅くなっても、迎えに来てもらえず、お母さんとは違う人があたしを保育園に迎えに来た時、あたしの中で何かが壊れた。
一人きりで待つ悲しみ。
寒さに耐えながら、暗闇をひたすら見続けていた。
明かりを灯してくれる人はいなかった。

暗闇にあたしは聞いた。

「どうすれば良いの?」