ほんのひととき





変わろうとした。
無理矢理にでも、変えようと思った。
今までのは全部、悪い夢だったんだ。
そうだ、悪魔があたしに囁いて、あたしに悪い夢を見せたんだ。
なら大丈夫。
あたしは今、ちゃんとここにいて。
ちゃんと心臓は動いてる。
そしてこの世界に、“存在”してる。
だから良いんだ。
変われば、何かが変わるはず。

しばらく経って、あの男の子から謝罪があった。
別に何でも良かった。
謝罪されたから、何かが起こる訳でも無い。
あたしが勝手に思い上がってしまっただけだから。
でも、君のような人間にはなりたくない。
そう天に誓った。
男の子は、バツが悪そうに「ありがとう」と言ってきた。
あたしはそれに返す言葉も無かった。

また無色透明な日々が始まり、春が訪れた。
この学校に来てから、2回目の春。
暖かい日差しに閉ざされた、1年前のあたしの夢。
「楽しく3年間を終わらせたい」
そんなの、簡単だと思ってた。
少なくとも、前の6年間は簡単だった。
友達もいて、それなりに楽しめた。
いろいろな問題はあっても、何とか解決出来るものだった。
だけど、そんな夢も、自分で忘れていたほどに散々だった。
普通なら悩むほどでもない何でもない事にも、敏感になって。
上手くいかない。
思い道理に自分が動けない。
スムーズに事が進まない。
こんな経験は初めてだった。

辛くても、思っている事を人に打ち明けると、「変な人」ってよく言われた。
自殺とか考えてるなんて人に言えない。
だから、いくら傷ついても人にこぼしたりしなかった。
出来なかった。
誰か分かってくれる人はいないのかな…。
死にたくはないけど、死ぬほど辛かった。
自分の居場所が無くなっていくような感覚。
ただの被害妄想だと良いんだけれど。

悪魔があたしに囁いた。

「迷惑はかけられるんじゃない、かけるんだ。」