走り出していた。
気がついた時には、既に、皆が走り出していた。
ボールを手で自在に操る人達の集団は、あたしを嘲笑っていた。
見下すような、冷たい、冷たい、視線。
あたしはそれらから逃げ出すように走り出していた。
ただ、ひたすらに。
息が続かないことも、分かりきっている事だった。
でも、走り続けた。
何度も、何度も、転んでいた膝には血が滲み。
腕には自ら付けた、深い深い切り傷。
みっともない、汚い、それも分かっていた。
ただ、誰かが、そんなあたしを見つけてくれるんじゃないか。
その希望は捨てずに、逃げ出したあたしの足は、止まる事を知らない。
だけど、誰かが。
あたしの手を掴んだ。
ぎゅっと。
強く、でも、優しく。
それは果てしなく儚い夢のような、温かい心の持ち主だった。
あたしは、振り返る。
ゆっくりと。
自然と、あたしの動悸は治まり、思考回路が追い付いてくる。
何故。
何故、この人はあたしを止められたの。
止まることのないあたしを、止められたの。
この人は、一体。
その瞬間、視界が開けた。
明るい、まばゆい光の先に、あたしは引っ張られた。
そして、その人は言った。
「…君は、生きていて良いんだよ。」



