「かもめ、おきろ!」

おにいちゃんの声がする。

「おいかもめ!」

その名前で呼ばないで。

「くそかもめ!」

「その名前で呼ぶなっていってんだろーが!」

おにいちゃんを蹴飛ばして私は目覚めた。

「てか勝手に部屋に入んないでよね」

乙女の部屋に男が勝手に入っていいわけが無い。

「いってぇなクソガキ」

「なんですか、クソアニキ」

似合わないエプロンをして立ち上がるおにいちゃん。

「今日から学校だろテメー」

あぁ嫌なこと思い出した。

そうだ。

今日から学校なんだ…。

中学2年生の時親の離婚でおにいちゃん

と別れお母さんと東京を出た私だったが

半年前お母さんが死んで私はお父さんと

おにいちゃんの所に帰ってきた。

そして今日から高校2年生として矢沢高

校って所に転入する。

矢沢高校は結構頭がいいって有名らしい。

私はお母さんからしたらかなりの不良娘

だったけどそれでも頭がよくてテストの

成績がよかったから何も言ってこなかっ
た。

「つーかいつまで私の部屋にいんだよ!

早く出てけ!」

私はおにいちゃんを部屋から追い出した。


矢沢高校は制服可愛んだよね。

さっ着替えよ!

そう思ってベッドからでると目覚まし時計が目に入った。

んん?

はっ?!6時半?!

……ふざけんなよクソアニキ。

なんで私がこんなに早く起きなきゃいけないんだよ!

はぁ…。

もう目が冴えて寝れないし、しょうがない着替えよう…。

ここの制服めっちゃ可愛んだよね。

てか私に似合ってない?!なんて思ってみる。

新しいモノって使うときワクワクする。

制服もそう。

靴下も、カバンも。

着替え終えると筆箱とお菓子しか入って

いないカバンをもって部屋を出る。

私が今いる家は離婚前にみんなで住んでた一軒家。

お父さんは仕事をかなり頑張ってローンを支払い終えた。

かなり稼いでるってことだよね。

「おにいちゃんご飯」

「ほらよ、早く食べてその不細工な顔どーにかしろよ」

「はいはい、わかってますよ」

お父さんはまだ寝てる見たい。

夜いないからな。

おにいちゃんはもう社会人でバリバリ働いてる。

私だけ働いてないから何故か居心地が悪い。

あれだ、だって2年くらいはなれてたんだもんね。

違和感があっても不思議じゃない。

でも私だけお金を稼いでないっていうのはやっぱり嫌で、

バイト探そう。

「ごちそうさまでした!」

ご飯を食べて終えてお皿を片付けた私は

洗面台に行く。

化粧ポーチをもって。

顔をあらって歯を磨いた私はポーチの中

からいろいろ取り出して化粧をする。

30分後。

よし、次は髪巻こう。

化粧を完璧に出来た私はコテを取り出し

て髪を巻いていく。

10分後。

「出来たー!」

うん、満足!

「おにいちゃん何時ー?」

「8時」

「え!やばいやばい!」

ここから学校まで電車に乗って30分くらいらしい。

リビングに戻りカバンをもって玄関に向かう。

「いってきまーす!」

家を出て駅まで10分。

今日は遅れるわけには行かないため走って向かう。

もうすぐ電車の来る時間。

定期で改札を早く抜けて電車がちょうど来た。

ピッタリ!

電車に乗ると混んでて端のほうに追いやられる。

矢沢に知り合いいるかな…。

こっち友達はどこの高校に行ったんだろう。

友達出来るかな。

前の学校ではあんまり学校行ってなかったし、

行ってても寝てることが多かったから誰もよってこなかった。

今度はちゃんと友達作りたいな。

電車をおりて歩いて行くと大きな門の学校に着いた。

さすが名門校って感じで、すべてが広くて綺麗だ。

校舎の中に入って階段を上がるとすぐ右に職員室があった。

廊下にはたくさんのトロフィーが飾られている。

勉学だけでなく部活も優秀なんですね。

「失礼します」

静かに職員室のドアを開ける。

「おお、来たか」

すぐ前の席にいた、

いかにも体育教師って感じの先生がデスクから離れ私の前に来た。

「星野かもめです」

「ちょうどHRの時間だから悪いけどもういくぞ?」

「はい、大丈夫です」

緊張するな…。

教師は4階で担任はこの体育教師の磯崎トオル。

4階まで上がると左に曲がる。

クラスは2ーAで一番頭のいいクラスらしい。

私の見た目からしたらあんまり頭いいとは思われないだろうな。

ヤンキーとかギャルとかってわけでもないけど。

「じゃあ入るぞー」

そう言って先生は教室のドアをあけて堂々と入っていった。

「今日は転校生を紹介するー。

入ってこい」

そう言われて私は静かに教室に入った。

先生が黒板に名前を書いた。

クラス全体を見るとみんなの視線が自分にきてるのがわかる。

その中で1人。

後ろで寝てる男の人がいた。

みんなあんな感じでいいのにな。

「えーと、星野かもめです。あ、でもかもめって呼ばないでください。

あと中2までこっちにいました。

そんで半年前に大阪からこっちに戻ってきました。よろしくお願いします」

みんなが私に拍手を送ったり言葉をかけたりする中、

さっきまで寝ていた男の人がこっちをびっくりした顔で見ている。

え……。

嘘…。

「理央…」

私は無意識のうちに名前をよんでしまった。

多分誰にも聞こえないくらいの声で。

とても震えて今にも泣き出しそうな声で。

私を見ている男の人は私の最も愛しかった人、

私の元彼、火神理央だった。