10円を1枚入れ受話器をあげる。


そして何度も押した番号をかける。


プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル


ーガチャー


「もしもし」


懐かしい声。


「もしもし…お母さん…?」


「…華瑠〈はる〉?」


お母さんが私の名前を呼ぶ。


「…うん。

久しぶり。」


「なに?

お金?」


「違うっ!


…あの、美虹…


私の子供を育てて欲しいの。」


「何言ってるの?!


ほらね、言ったでしょ?

子供を育てるのは楽ではないの!」


「…私ね、病気になっちゃったの。」



「…え?」


「それでね、もう先は長くないみたい…


だから、美虹を育てて欲しいの。


もぅ、私は病院から出れない。


だから、お願い。

美虹を…育ててあげて?


お金ならずっと貯めてきたのがあるから

それで払って。」



「…わかったわ。」