「ん、んん……」
起き上がると、身体の節々が痛む。
「ここどこ……あれ?」
確か、ナギと走る展開になって……
ボーッとしている頭をおさえているとカーテンがバッとあけられる。
「莉音!?」
そこには危機迫ったともちゃんの顔がある。
そして私と目があうと心底ホッとした表情をしてこちらにジャンピングしてきた。
「うぐっ」
「心配させんな」
強い口調でそういいながら背中をなででくれる。
なんだか、ともちゃんらしいな。
でも、くるしい……
「僕も話したいんだけど、いいかな?」
その声に心臓が飛び上がるような感覚を覚える。
「クソ王子が……」
小さくつぶやきながら私から離れるともちゃん。
「大丈夫?」
「ま、まあ、大丈夫」
こんな優しい笑みを向けられたのは初めてかもしれなくて思わずしどろもどろになる。
「あ、あの、そういえば、ここまで運んでくれたり?……」
なにこいつ、重すぎ。とか思われてたらどうしよう。
「ちょっとお、莉音!」
ナギの後ろから顔をだしたのはソラ。
「僕が運んできたんですけどお。」
ムスッとしていうソラに慌てて
「あ、ああ。ソラ、ごめんね!」
とあやまる。
「ナギは華奢な女子並みの力しかないからねえ。」
え……
思わずナギの方をみると頰を若干赤くしてプイッとそっぽを向いた。
ほんとなんだ。まあ、イメージ通りといえばイメージ通りなのだが。
「続いて男子100m走です」
外から響いてくるアナウンスにはっとする。
「ナギもソラも100m走でるよね!?」
「ん?うん。でるけど……」
「同じ列だよ!」
「じゃあ、早くいかないとじゃん!」
そういうも二人の顔はうかない。
どうかしたのだろうか。
「でも、こんな状態の莉音ちゃんを置いていけないよ……」
ソラがそういって若干むくれる。
「大丈夫よ、こいつには私がいるんだから。とっとと行きなさい」
ともちゃんがそういうと二人はしぶしぶという感じで去っていく。
「ゆっくりしててね」
そういうソラの後ろでナギがとても暗い表情をしていたのに私は気づいてあげられなかった。
外から聞こえてくるアナウンスに耳を澄ましながら、ともちゃんと談笑していると突然黄色い歓声が響いてくる。
きっとこれからナギとソラが走るのだろう。
「……気になるなら見にいけば。」
「え?」
「倒れたら私がどうにかしてやるから。」
ああ……ほんと、ともちゃんにはかなわないなあ。
そう思いながら
「ありがとう!」
といい立ち上がる。
うっ……まだ胸の痛みは消えないけど大丈夫かな……。
「うわあ……」
並み居る女子の隙間からレースの様子をみつめる。
ナギが一位、ソラが二位でゴール間近だ。
がんばれ。周りの女の子が口にするその言葉を発そうとして口をつむぐ。
あんな可愛い子や美人な人が、沢山の人が「がんばれ」っていってるんだ。
私が「がんばれ」っていったところで何も変わらないんじゃないかな……。いったところで私の声なんてかき消されてしまうだろう。
そんな弱気なことを考えているとゴール間近でナギが盛大に転んでしまう。
そこからはナギくんがんばれコールがはじまり私も気づかぬ間に「ナギがんばれ」といっていた。
本当に気づかない間に。声を発することに抵抗があった私だけど「ナギがんばれ」その一言をいうだけですごく暖かい気持ちになった。
なんとかゴールしたナギだけど、順位は三位になってしまった。
「ナギくん大丈夫?」
そんな言葉をかけられていつもの笑みをみせているナギだけど明らかに無理してる。あの子達、全然気づかないんだ。いつもキャーキャーいって「ナギくん大好き」とかしょっちゅういってるくせに。
ムズムズする。
まだ、胸の痛みも消えないし行ったところで何もできないだろうだけど。スタスタと歩きだす。
ナギの方に近づいていくものの人が密集していて思うように進めない。
その時むんずと腕をつかまれる。
「え……」
振り返ると保健の先生がいた。カールされた髪はボサボサで顔もどことなしかやつれてる。
保健室にもいなかったし、ずっと外で救護にあたったりしていたのだろう。
「あなた、保健係よね。そこの子保健室に連れてって手当してあげて」
そういわれて初めて自分が保健係のワッペンをつけていたことを思い出す。
保健の先生は私が倒れた生徒ということはわかっていないみたいだ。
体の調子もまあまあいいし……
「はい、わかりました」
そういうと、先生はこれでもかというほどの大声で
「みなさーん!今、保健係のものが救護にが向かいますので道をあけてくださーい!!」
その大声にナギくんを囲んでいた人達が一斉にこちらをみる。
私は保健係のワッペンをきちんと見えるようにしてナギの元へ急いだ。
「大丈夫?」
ナギの背中に手をまわしながらそうたずねる。
膝からの流血は思った以上にひどい。
「大丈夫なわけないじゃん」
そう小さな声でいった直後に「ナギくん、大丈夫?痛くない?」とたずねてきた同じクラスの女子にニコニコしながら「全然平気」と答えるナギ。
さっき大丈夫じゃないっていってたのに。
私には顔を作らなくてもいい、と思っているのだろうか。それが少し腹が立つような嬉しいようなそんな複雑な気持ちになった。
校舎の中は外と違ってとても涼しい。
「ちょい……ストップ」
もう少しで保健室、というところでナギが苦しげにそういう。
「あっ……」
私が急いで保健室に連れていこうとしたものだから彼の足からの出血がひどくなっていた。
「ごめん!ちょっと座ろ!!」
あともう少しでつくもののここで無理をさせてはいけない。
体操着のズボンのポケットを探る。
ハンカチ来い!そう必死に祈りながら。
ハンカチ貸したら、洗濯して返してくれるだろうか。ナギの匂いのハンカチとか……。
妄想で若干クラクラしながら探しあてたのはポケットティッシュ(洗濯で一回間違って洗われたっぽい)
使えないことはないはずだ。
私は無言でナギの足をふく。なんてべっぴんさんな足なんだ。白くてスベスベですね毛が一本もない。まさに美脚。
なんていろいろ思いつつあることに思い当たる。こいつ、やけに静かじゃない?いくら怪我してるからって……
「…………っ!?」
今までにないぐらい心臓のあたりが痛くなる。
ん?ナギ……こいつ……なんか歌ってる……。
ううん。なんか、じゃない。れん兄が歌っていたのと同じ……
起き上がると、身体の節々が痛む。
「ここどこ……あれ?」
確か、ナギと走る展開になって……
ボーッとしている頭をおさえているとカーテンがバッとあけられる。
「莉音!?」
そこには危機迫ったともちゃんの顔がある。
そして私と目があうと心底ホッとした表情をしてこちらにジャンピングしてきた。
「うぐっ」
「心配させんな」
強い口調でそういいながら背中をなででくれる。
なんだか、ともちゃんらしいな。
でも、くるしい……
「僕も話したいんだけど、いいかな?」
その声に心臓が飛び上がるような感覚を覚える。
「クソ王子が……」
小さくつぶやきながら私から離れるともちゃん。
「大丈夫?」
「ま、まあ、大丈夫」
こんな優しい笑みを向けられたのは初めてかもしれなくて思わずしどろもどろになる。
「あ、あの、そういえば、ここまで運んでくれたり?……」
なにこいつ、重すぎ。とか思われてたらどうしよう。
「ちょっとお、莉音!」
ナギの後ろから顔をだしたのはソラ。
「僕が運んできたんですけどお。」
ムスッとしていうソラに慌てて
「あ、ああ。ソラ、ごめんね!」
とあやまる。
「ナギは華奢な女子並みの力しかないからねえ。」
え……
思わずナギの方をみると頰を若干赤くしてプイッとそっぽを向いた。
ほんとなんだ。まあ、イメージ通りといえばイメージ通りなのだが。
「続いて男子100m走です」
外から響いてくるアナウンスにはっとする。
「ナギもソラも100m走でるよね!?」
「ん?うん。でるけど……」
「同じ列だよ!」
「じゃあ、早くいかないとじゃん!」
そういうも二人の顔はうかない。
どうかしたのだろうか。
「でも、こんな状態の莉音ちゃんを置いていけないよ……」
ソラがそういって若干むくれる。
「大丈夫よ、こいつには私がいるんだから。とっとと行きなさい」
ともちゃんがそういうと二人はしぶしぶという感じで去っていく。
「ゆっくりしててね」
そういうソラの後ろでナギがとても暗い表情をしていたのに私は気づいてあげられなかった。
外から聞こえてくるアナウンスに耳を澄ましながら、ともちゃんと談笑していると突然黄色い歓声が響いてくる。
きっとこれからナギとソラが走るのだろう。
「……気になるなら見にいけば。」
「え?」
「倒れたら私がどうにかしてやるから。」
ああ……ほんと、ともちゃんにはかなわないなあ。
そう思いながら
「ありがとう!」
といい立ち上がる。
うっ……まだ胸の痛みは消えないけど大丈夫かな……。
「うわあ……」
並み居る女子の隙間からレースの様子をみつめる。
ナギが一位、ソラが二位でゴール間近だ。
がんばれ。周りの女の子が口にするその言葉を発そうとして口をつむぐ。
あんな可愛い子や美人な人が、沢山の人が「がんばれ」っていってるんだ。
私が「がんばれ」っていったところで何も変わらないんじゃないかな……。いったところで私の声なんてかき消されてしまうだろう。
そんな弱気なことを考えているとゴール間近でナギが盛大に転んでしまう。
そこからはナギくんがんばれコールがはじまり私も気づかぬ間に「ナギがんばれ」といっていた。
本当に気づかない間に。声を発することに抵抗があった私だけど「ナギがんばれ」その一言をいうだけですごく暖かい気持ちになった。
なんとかゴールしたナギだけど、順位は三位になってしまった。
「ナギくん大丈夫?」
そんな言葉をかけられていつもの笑みをみせているナギだけど明らかに無理してる。あの子達、全然気づかないんだ。いつもキャーキャーいって「ナギくん大好き」とかしょっちゅういってるくせに。
ムズムズする。
まだ、胸の痛みも消えないし行ったところで何もできないだろうだけど。スタスタと歩きだす。
ナギの方に近づいていくものの人が密集していて思うように進めない。
その時むんずと腕をつかまれる。
「え……」
振り返ると保健の先生がいた。カールされた髪はボサボサで顔もどことなしかやつれてる。
保健室にもいなかったし、ずっと外で救護にあたったりしていたのだろう。
「あなた、保健係よね。そこの子保健室に連れてって手当してあげて」
そういわれて初めて自分が保健係のワッペンをつけていたことを思い出す。
保健の先生は私が倒れた生徒ということはわかっていないみたいだ。
体の調子もまあまあいいし……
「はい、わかりました」
そういうと、先生はこれでもかというほどの大声で
「みなさーん!今、保健係のものが救護にが向かいますので道をあけてくださーい!!」
その大声にナギくんを囲んでいた人達が一斉にこちらをみる。
私は保健係のワッペンをきちんと見えるようにしてナギの元へ急いだ。
「大丈夫?」
ナギの背中に手をまわしながらそうたずねる。
膝からの流血は思った以上にひどい。
「大丈夫なわけないじゃん」
そう小さな声でいった直後に「ナギくん、大丈夫?痛くない?」とたずねてきた同じクラスの女子にニコニコしながら「全然平気」と答えるナギ。
さっき大丈夫じゃないっていってたのに。
私には顔を作らなくてもいい、と思っているのだろうか。それが少し腹が立つような嬉しいようなそんな複雑な気持ちになった。
校舎の中は外と違ってとても涼しい。
「ちょい……ストップ」
もう少しで保健室、というところでナギが苦しげにそういう。
「あっ……」
私が急いで保健室に連れていこうとしたものだから彼の足からの出血がひどくなっていた。
「ごめん!ちょっと座ろ!!」
あともう少しでつくもののここで無理をさせてはいけない。
体操着のズボンのポケットを探る。
ハンカチ来い!そう必死に祈りながら。
ハンカチ貸したら、洗濯して返してくれるだろうか。ナギの匂いのハンカチとか……。
妄想で若干クラクラしながら探しあてたのはポケットティッシュ(洗濯で一回間違って洗われたっぽい)
使えないことはないはずだ。
私は無言でナギの足をふく。なんてべっぴんさんな足なんだ。白くてスベスベですね毛が一本もない。まさに美脚。
なんていろいろ思いつつあることに思い当たる。こいつ、やけに静かじゃない?いくら怪我してるからって……
「…………っ!?」
今までにないぐらい心臓のあたりが痛くなる。
ん?ナギ……こいつ……なんか歌ってる……。
ううん。なんか、じゃない。れん兄が歌っていたのと同じ……



