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少しだけ昔話をしようか。






一年と二ヶ月前、初めてあいつに会った。

硬い学ランに袖を通して、やけに楽しそうな同級生になるだろう生徒たちを横目に見ながら、「目の保養に」とかわけのわからないことを言ってついてきたはずの兄を探す。
スーツで結構男前だからすぐに見つけられると思ったのが間違いだった。
他の保護者もスーツなことを忘れていたのだ。


「たく…」


無駄に長い入学式で固まった体をゴキゴキ鳴らす。
疲れた。早く帰りたい。
どこ行ったこの野郎。

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