立花さん。


 君は、本当にばかだね。


 僕がなくなっていた君の上靴を渡すと、すぐに笑って、それを受け取る。


 ばかだねそれ、僕が隠したのに。


 水着もエプロンも体操服も、ピアニカのホースも君のお気に入りのペンも。


 一時なくなっていた算数の教科書だって、君が探している最中、ずっと僕の机の中にあったのに。


 なんでこんなこと、するのかって?


 困った顔が、見たいから。


 ……でもそんなの知られたら、君は離れていくだろうから、僕は正義のヒーローで居なくちゃならない。


 そこで思い付いたのが、自作自演。


 立花さんには嫌われずに、彼女の困った顔が見られる。


 寧ろ彼女は僕に感謝をして、バレンタインのチョコレートまでくれた。


 他の人にも渡していたけれど、一目でわかる。


 僕のは特別だってこと。



「あれ?また算数の教科書が……。」


 ……立花さん。


 君は、本当にばかだね。


 でも大丈夫。


「僕が見せてあげるよ。」


 僕は表面上、君のヒーローだから。