海、親父、紗奈のお父さんは未だあたふたしていて、高木さんは三人を見て、一喝する。






『そこの男三人!
 初めての陣痛で紗奈ちゃんが一番不安なんだから、三人があたふたして妊婦の不安を煽らないで!

 もし出来ないなら、違う部屋にでも行ってて!』





優しそうなイメージだったけど、“看護師”の顔、なのだろうか…。








『……………陸………』





紗奈が心細い声で俺の名前を呼ぶ。



俺はすぐに紗奈に近寄り、紗奈の手を取る。




『紗奈、痛い?
 俺、どうすればいい…?

 腰?背中?どこさすればいい?』





必死に紗奈と行った両親学級で教わったことを思い出し、紗奈に問いかける。






『………手……このまま繋いでて……?』





紗奈がそう言うから、俺は紗奈と繋いだ手をぎゅっと握りしめた。







『………ありがと………』





さっきより少しは落ち着いたのか。


紗奈は微笑むだけの余裕を感じられた。








『段々、陣痛の間隔が短くなってきたね。
 10分間隔になったら病院に行くからね?』




高木さんは冷静に紗奈にそう言った。