ついに来てしまった、この日が。 どれだけこの日が来ないことを願ったか……。 「卒業生、入場」 司会の言葉と同時に流れ始めた吹奏楽部の演奏。 そのあとすぐに私たちの横を卒業生が通り始める。 卒業生の制服の左胸には赤い花がついている。 「陽菜、早い」 「だってぇ~……」 私の隣に座っている花香ちゃんが呆れたような、寂しそうな声で私に話しかけてくる。