「でっけぇ………!!」


イタリアについて二日目。

どこもかしこも日本と違う建物に囲まれた中で一際目を引く大きな建物に案内された。

「じゃぁ、父さんは受付の手伝いしてくるから。後は二人で自由にしててよ。」


冴えないなりに正装を身につけた父さんがスタッフルームに向かっていく。

「自由にしててと言われてもねぇ………どうする母さん……ってあれ?」

振り返るとそこにあるはずの母さんの姿なし。




「こちらのシャンパンも如何ですか、マドモアゼル?」

「いやいや、それよりこちらのタルトは如何でしょうか?」

「そんなことよりマダム、私とお話しませんか?」


「やだぁーもう、皆さん、全部いただくわぁ~!」



アラフォー既婚者子持ちが十代の私を差し置いて逆ハーレム状態となっているという事実に涙が止まらない。


「あっ凛海!!お母さんちょっと呼ばれちゃったから向こう行くわね~。凛海も自由にしてていいわよ~。」


そう言うと母さんは大事な娘一人残してどこかに行ってしまった。ちくしょう。

元々テレビアナウンサーだった母さんは、確かに年をとった今もスタイルが良くて美人だ。もちろん英語もペラペラ。

ちなみに何故そんな母が父と結婚したのかは知らない。

母の教育もあって私もそこそこ英語はできるが、流石にあんな流暢にとはいかない。


仕方なくただひたすら飲み食いしていた私は、急に足に痛みを感じてパーティー会場から抜け出した。