シンデレラに恋のカクテル・マジック

 菜々は緊張してロボットのようにぎこちない動きでバスルームへと向かった。着てきたものを脱いでカゴに入れ、バスルームのドアを開ける。タイルが濡れて湯気のこもったそこを、ついさっきまで永輝が使っていたのだと思うと、なんだか体がほてってくる。

(やだ、何よ、もう!)

 大きな音を立て続ける心臓をなだめようと、ぬるめのシャワーを浴びた。それでも体のほてりが収まらなくて、ついには冷水を浴びる。

(つ、冷たっ)

 どうにか鼓動が緩やかになり、菜々はバスルームから出てパジャマを着た。

「ずいぶんゆっくりしてたね。倒れてないか心配になるところだったよ」

 和室で座って待っていた永輝が、立ち上がって菜々に近づいてきた。彼女の髪が濡れたままなのに気づいて、肩にかけていたタオルで菜々の髪をゴシゴシと拭く。

「ひゃ」

 目の前に甘い表情の永輝がいて、菜々の心臓がまたうるさく音を立て始めた。

「ちゃんと乾かさないと。いくら夏でもこんなに濡れた髪のままじゃエアコンで冷えるぞ」

 鳶色の瞳でまっすぐに顔を覗き込まれ、鼓動が大きく跳ねる。

(し、心臓が持たない!)

「じ、自分で拭けます! 大丈夫ですからっ」

 真っ赤な顔でつい怒鳴るように言ってしまい、永輝が困惑気味に笑みを作った。