シンデレラに恋のカクテル・マジック

「でも、ここからだと高速を使っても一時間はかかると思います」
「構わないよ。送っていく。夜のドライブも気持ちいいから」
「本当にいいんですか?」
「ああ」
「ありがとうございます」

 もうお礼の言葉以外言いようがなかった。

 菜々がシートベルトを締める間、永輝がカーオーディオを操作した。夏の夜にふさわしい、しっとりとしたジャズがスピーカーから流れ始める。菜々が実家の住所を伝えると、永輝がゆっくりとアクセルを踏み込み、車が滑らかに走り出した。

 菜々は深く息を吐き出して窓の外を見た。この辺りは閑静な住宅街で、人通りも車の往来も少ない。やがて高速道路の入り口が見えてきて、ETCのゲートを抜けたとたん、永輝がアクセルを踏み込んだ。車がぐっと加速して高速の流れに乗る。

 窓から日本一の高層ビル、あべのハルカスが見え、近隣のビルやマンションとともに、大阪の夜景を彩っている。やがて街の明かりを水面に映した大きな川を渡り、電車の線路と併走して走る間も、永輝は何も言わなかった。菜々もその沈黙が心地良くて、じっと座席に座っている。

 四十分ほどして高速から下り、大阪府の郊外の国道に出た。