シンデレラに恋のカクテル・マジック

 永輝にはまだ菜々の知らない面がたくさんありそうだ。

「よかったら、菜々ちゃん、うちでメシ食ってく?」
「え?」

 永輝に言われて、菜々は彼の方を見た。

「お好み焼きくらいならすぐできると思う。今から空腹で帰るより、食べて一休みしてから帰ったら」
「じゃあ、お言葉に甘えて。もう甘えてばかりですけど」
「いいよ、一人で食うより二人で食った方がうまい」
「そうですよね、お好み焼きはとくに」

 菜々はにっこり笑って歩き出そうとしたが、意外にも脚が疲れて重いことに気づいた。

「あれ、フレアの練習って思ったより脚にきますね」
「だろ? このまま自転車を漕いで帰るのは大変だろうと思ったんだ」
「ありがとうございます」

 菜々の胸がほわっと温かくなった。気遣ってくれる人がそばにいてくれるのは嬉しい。

「自転車はこっち」

 永輝の案内でマンションの駐輪場に自転車を駐め、彼とともにエレベーターで三階へ上がった。永輝の部屋は南西に面した角部屋だ。リビング・ダイニングに入ると、淡いブルーのカーテンを通して、オレンジ色の夕日が差し込んでいる。