シンデレラに恋のカクテル・マジック

「でも、後で覚悟しておいて」
「え?」

 菜々が怪訝そうに見返したときには、永輝はジャケットのポケットから自分のスマートフォンを取り出していた。そして手早く操作する。

「何してるの?」
「健太にメールを送った」
「どうして健太さんに?」

 菜々の問いかけに、永輝がいたずらっぽい笑みを浮かべて答える。

「あいつ、今この家の書斎で社長に取材中なんだ」
「え?」

 ますますわけがわからない。首を傾げる菜々と眉を寄せる一臣を見ながら、永輝が説明を始める。

「サンドリヨンの休憩室に置きっぱなしになっていた名刺を見て、菜々ちゃんの祖父の住所はわかったんだ。でも、さすがに俺が直接乗り込んでいっても会わせてもらえないだろうと思って、健太を頼った」

「どうして健太さんなの?」

 菜々の問いかけに、永輝が答える。

「辻岡健太は京東大学大学院経営学研究科の准教授なんだ。バブル崩壊後の日本企業の生き残り戦略と経営の変化について研究しているらしい。で、日本経済に多大な貢献をしてきたくずはグループの社長に会ってみないかって持ちかけた。そうしたら健太のやつ、すごく乗り気になってさ。すぐに本社に連絡を入れてくれた。さすがに京東大学大学院の名前は伊達じゃないよな。本社からすぐに社長に連絡が行き、社長が快諾してくれたんだ」