シンデレラに恋のカクテル・マジック

 一臣が体の両側で手の甲が白くなるくらい拳を握りしめた。下唇を噛みしめてじっとフローリングの床を睨んでいる。その顔には苦悩、恐怖、絶望とさまざまな感情が浮かんでは消えた。良介に今のことを話せばどうなるか。それを考えているのだろう。

 一臣の様子を見ていると、菜々は彼が気の毒になってきた。

「私がおじい様に、好きな人がいるので和倉さんとは結婚できませんって言います」
「どうしてこんなやつをかばうんだ? 俺と菜々ちゃんを陥れようとしたやつだぞ?」

 永輝が腑に落ちないといった様子で言った。菜々はそっと彼の腕に手を乗せて言う。

「祖父がどれだけ横暴な人かということは、この二日間で身に染みてわかりました。それに和倉さんが優秀な人だってことは、彼の今の地位を見たらよくわかります。そんな人のキャリアをつぶしたくないし、何より彼が祖父の会社を去るのは、会社にとっても損失だと思うの」

 永輝が小さく首を振って言う。

「わからないな。この二日間、俺がどれだけ心配したと思う? 菜々ちゃんだってもしかしたら本当に俺が浮気したと思って、俺を嫌いになったかもしれないのに」