シンデレラに恋のカクテル・マジック

 一臣の顔が迫ってきて、菜々は彼に屈しまいと彼を睨みつける。

「キスをするときは目を閉じるもんだろ」

 一臣が小馬鹿にするように言った直後、別の男性の声が聞こえてきた。

「今すぐ菜々ちゃんから離れろ。それ以上菜々ちゃんを口説くのは俺が許さない!」

 菜々はハッとして声の聞こえてきた方を見た。一臣の陰になっていて見えないが、忘れたくても忘れられない人の声を――ずっと心が望んでいた人の声を――聞いて、菜々の胸が瞬く間に熱くなる。

「まさか」

 一臣が体を起こして振り返ると同時に、菜々も声を上げた。

「永輝さんっ!」

 ゲストルームの入り口から、つかつかと歩み寄ってきたのは、紛れもなく深森永輝その人である。

「永輝さんっ。永輝さん!」

 菜々が目に涙を浮かべたまま彼に向かって両手を伸ばすと、永輝が一臣の肩に手をかけ、彼を菜々からぐいっと引きはがした。

「あんたがなぜここに……」

 一臣がよろけながらベッドから離れ、つぶやくように言った。

「どうして俺がここにいるかって? お姫様のピンチに現れるのが王子様ってもんだろ?」

 永輝がいたずらっぽく笑って菜々に目配せをした。