一臣の口調はどこか楽しげにも聞こえる。
「そ、そんな……こと」
菜々の脳裏に、サンドリヨンの客――大樹や健太、それに親しくなったほかの常連客――の顔が浮かぶ。あのバーには永輝とフレアをして過ごした充実した時間、おいしいカクテル、楽しい会話、サマー・フェスタ……さまざまな思い出がある。
(ステキな思い出がいっぱいあるバー。気さくに友人が集えるバー。私のせいでそれがなくなってしまうなんて……)
菜々は小声で言う。
「それだけは……やめてください」
「それなら、僕と結婚するな?」
「どうしてです? そんなことまでして……私と結婚しようとするのは、おじい様に命じられたから? おじい様の命令は絶対なの?」
菜々は悲しい気持ちで一臣を見上げた。彼は目を細めて菜々を見返す。
「社長はキミが東京に残ることを望んでいる。僕と結婚しようがしまいが、どちらでも構わない。だが、僕はキミと結婚したい。社長の孫娘の夫という地位がほしいからな」
一臣が自嘲するように笑い、菜々は目を見張った。
「私の夫という地位……?」
「そうだ。葛葉社長の孫娘であること。それこそキミが持つ最大の魅力だ」
「そんな……」
「そ、そんな……こと」
菜々の脳裏に、サンドリヨンの客――大樹や健太、それに親しくなったほかの常連客――の顔が浮かぶ。あのバーには永輝とフレアをして過ごした充実した時間、おいしいカクテル、楽しい会話、サマー・フェスタ……さまざまな思い出がある。
(ステキな思い出がいっぱいあるバー。気さくに友人が集えるバー。私のせいでそれがなくなってしまうなんて……)
菜々は小声で言う。
「それだけは……やめてください」
「それなら、僕と結婚するな?」
「どうしてです? そんなことまでして……私と結婚しようとするのは、おじい様に命じられたから? おじい様の命令は絶対なの?」
菜々は悲しい気持ちで一臣を見上げた。彼は目を細めて菜々を見返す。
「社長はキミが東京に残ることを望んでいる。僕と結婚しようがしまいが、どちらでも構わない。だが、僕はキミと結婚したい。社長の孫娘の夫という地位がほしいからな」
一臣が自嘲するように笑い、菜々は目を見張った。
「私の夫という地位……?」
「そうだ。葛葉社長の孫娘であること。それこそキミが持つ最大の魅力だ」
「そんな……」


