シンデレラに恋のカクテル・マジック

「社長も僕が菜々さんと結婚することを望んでいるようだよ。今朝、秘書に命じて、午後にはあなたアルバイト先すべてに退職の連絡を入れさせていた」
「嘘っ」
「嘘じゃない。英進会ゼミ、阪進予備校、家庭教師派遣センター、そしてサンドリヨン。一身上の都合による退職を伝え、代わりに傘下の人材派遣会社から申し分のない人材を送るということで承諾を得たそうだ」
「まさか……」

 そんなことできるはずない、いや、あの祖父ならやりかねない。そんな考えが菜々の頭の中を駆け巡る。愕然と見上げる菜々の両手首をつかんで、一臣がベッドに縫いつけた。

「信じられないなら、後で自分で社長に訊いてみればいい」

 一臣が片方の口角を引き上げ、不敵な笑みを浮かべた。そんな彼を見て、菜々の頭の中でモヤモヤとしていたものが、少しずつ何かの形を取り始める。

「東京に向かう新幹線の中で、和倉さんが私のアルバイト先を詳しく聞いたのは……まさか……最初から祖父にそうさせるつもりで……?」
「そうだよ。僕は菜々さんを見たときから、絶対に僕のものにしようと思ってたんだ」

 一臣が菜々の目を覗き込んで言った。