シンデレラに恋のカクテル・マジック

 由香里が口元で小さく微笑んだ。

「菜々さん、さっき、和倉くんが迎えに来たって言ってたわよね?」
「はい」
「和倉くんは……三十五歳にして本社の取締役経理部長で、葛葉の血縁者を除けば、一番次期社長に近い男って言われてるの。一般社員の間では、陰で〝プリンス〟って呼ばれているとか聞いたわ」
「そうなんですか」

 確かに正統派のハンサムで、その王子様のような立ち居振る舞いを考えると、プリンスと呼ばれるのも納得だ。

「でも残念ながら、くずはグループは親族経営だから、和倉くんが社長になるのは難しいだろうっていうのが管理職の人たちの考えなのよ」
「親族経営……」

 菜々のつぶやきに、由香里が答える。

「そう。最近、大手企業で父と娘の争いが裁判にまで発展した例があったでしょう? あれを受けて、会議で親族経営の問題点が指摘されたこともあるわ。でも、海外の有名企業でも親族経営のところはあるから、くずはグループで今すぐ経営方針が変わることはないと思うの」

 由香里の話の意図が見えず、菜々は叔母を黙って見つめた。