シンデレラに恋のカクテル・マジック

「それとも今から行かないと仕事に遅れるとか?」
「あ、いえ。ここからなら九時に出れば間に合うと思います」

 そうすれば、なんとか家に帰ってシャワーを浴びて着替えることもできるだろう。

「それならぜひ食べていって。キミが残したら、それこそ食べ物が無駄になる」

 そう言われると、ごちそうにならないわけにはいかない。永輝が椅子を引いて手で座るように合図をするので、菜々は遠慮がちに腰を下ろした。

「すみません、それじゃ、お言葉に甘えてごちそうになります」

 菜々が言うと、永輝がホッとしたように表情を緩めた。そうして向かい合わせに腰を下ろす。

「菜々ちゃんはコーヒー飲める?」
「はい」
「砂糖とミルクは?」
「あ、両方……」

 永輝が白いシュガーポットとミルクピッチャーののったかわいらしいトレイを手で示した。

(男の人なのに、おしゃれなのを持ってるんだ……)

 そう思って、ハッと気づいた。

「あの、すみません。私を泊めて誤解されたりしませんか?」
「誤解?」

 永輝が眉を寄せた。

「はい。彼女さんとか奧さんとか……」
「ああ、どっちもいない。特定の相手は作らない主義なんだ」
「そうですか……」