シンデレラに恋のカクテル・マジック

「柳井とは週に一度食事をするだけの関係だったんだけど、彼は私が髪の毛を真っ赤に染めて高級レストランに現れても、乱暴な言葉遣いをしても、令嬢らしからぬ派手な服装をしても、まったく怒らないの。とうとう頭に来て、私、大学を卒業した日に、酔った勢いでホストクラブに行ったわ」

 菜々が目を見開いたのを見て、由香里が苦笑する。

「我ながら向こう見ずなことをしたって今では思ってるのよ」

 菜々が黙っていると、由香里が話を続ける。

「それでね、ナンバーワン・ホストを新居になるはずのマンションにお持ち帰りしたの。柳井が来る時間を見計らってね。そうすればさすがの柳井でも腹を立てて婚約を破棄するだろうって期待してたの。確かに柳井はものすごく怒ったわ。でも、それは私がホストを連れ込んだからじゃなくて、私が自分を大切にしていないことを怒ってるんだって言うの」
「自分を大切にしていない……?」
「そうなの。腹立ちに任せて自分を安売りするなって。その言葉にはじいんときちゃった。それでも、親に決められた結婚だなんて、まだ二十二歳の私には向き合えなかった。それに、そのとき連れ帰ったホストがズルイ男で、父を揺すろうとしたの。そのせいでホストをお持ち帰りしたことが父にバレちゃって、頭を冷やせってフランスの語学学校に無理矢理留学させられちゃった。まあ、日本でスキャンダルになるのを防ぐためっていうのもあったと思うけど」