シンデレラに恋のカクテル・マジック

 何も考えられない。何もしたくない。

 泣きじゃくる菜々を、一臣はいつまでも抱きしめてくれていた。


 菜々は自分の体がふわりと抱き上げられて、ふと我に返った。泣き疲れてウトウトしていたようで、一臣が菜々を抱き上げてベッドに運んでくれているところだった。

「すみません、私、いつの間にか……」
「いろいろあって疲れたんですよ。気にしないで」

 彼の腕の中で固まる菜々を、一臣がベッドにそっと寝かせて微笑んだ。

「今何時ですか……?」

 菜々の問いかけに、一臣が腕時計をチラリと見て答える。

「九時半になったところです」
「遅くまで和倉さんをお引き留めしてしまって、すみません」
「気にしないでって言ったのに」

 一臣がベッドに腰を下ろして、菜々の髪にそっと触れた。

「今日はどうしても泊まるしかなさそうですね……」
「そうですね。明日の朝、僕が迎えに来ましょうか?」
「明日の朝……」

 あんなに頑なな気持ちで帰りたいと思っていたのに、永輝の裏切りを知ってしまった今、大阪に戻りたい気持ちはすっかり消え去っていた。

「しばらく仕事を休んではどうですか?」
「どうしようかな……」