シンデレラに恋のカクテル・マジック

 菜々の呼びかけに対し、電話の向こうから沈黙が返ってくる。

「今、電話したらダメだったかな?」

 開店直後で取り込み中だったのかも、と菜々が思ったとき、聞き覚えのない女性の声が返ってきた。

「んー、ダメかも。永輝ってば疲れて爆睡中」

 菜々は眉を寄せた。

「え? これって深森永輝さんの番号ですよね?」
「そうよ。着信音がいつまでも鳴っててうるさいから出ちゃった。けど、昼からずっとベッドの中で、さすがにあたしも彼もクタクタなの。もう少し寝かせてくれない?」
「ひ、昼からずっとベッドの中? それってどういう……」

 口ごもる菜々に対し、電話の向こうでクスッと笑う声がした。

「言わないとわからない?」
「あ、あなた、誰ですか? 永輝さんはそこにいるんですか?」
「いるわよ。あなたこそ誰?」
「私は……永輝さんの恋人の……」
「あら、彼の恋人はあなただけじゃないのよ?」
「えっ」
「ねぇ、もう切るわね。あたしもまだ寝たいから。彼と一緒に」

 通話口からまた笑い声が漏れ聞こえてきた。菜々が何も言えないでいるうちに電話が切られ、その耳障りな音を聞いた直後、菜々の体がガタガタと震え出した。