シンデレラに恋のカクテル・マジック

 会話のないまま、デザートのシトロンのソルベを食べ終えた。

「社長は本日の午後、医師の往診がございますね?」

 食後のコーヒーが給仕される間に一臣が良介に言った。

「ああ。面倒だが仕方ない」
「無理をなさらないでください」
「わかっておる。ところで、和倉くん、今日一日休暇を取っているのなら、午後、菜々に東京を案内してやってくれんか?」

 菜々の希望を聞く気もないらしく、良介は一臣だけを見て言った。

「かしこまりました」
「助かるよ。菜々、和倉くんにいろいろ案内してもらって、夕食前にまた戻ってきなさい」

 夕方には新幹線に乗りたいと思っていたので、菜々は遠慮がちに口を開いた。

「あの、五時頃には東京を発とうと思っていたんですが」

 とたんに良介が不機嫌な表情になった。

「生まれて初めて祖父に会ったというのに、おまえは一日も経たずに帰る気か」
「すみません。でも、仕事の休みをもらったのは今日だけなんです。それにおじい様もお元気そうなので、また近々改めてお伺いいたします」

 できるだけ丁寧に言ったつもりだったが、良介の表情はさらに険しくなった。

「これだから斎城の娘は」