シンデレラに恋のカクテル・マジック

 ドラマや小説の中でしか見聞きしたことのない高級住宅街だ。

 一臣に頼んで祖父の住所を名刺に書いてもらったが、あの名刺はサンドリヨンの休憩室のローテーブルに置きっぱなしにしてしまい、結局見ていなかったのだ。

(そんなところに住んでいる人の前で粗相のないようにできるかなぁ……。私がヘマをしたらお父さんやお母さんの教育がなってないからだ、なんて思われたらどうしよう……)

 不安になる菜々を乗せて、高級車はほとんど揺れを感じさせないまま忙しい通りを走り抜け、田園調布にある邸宅へと彼女を案内した。

「正面に見えるのが社長の屋敷です」

 まっすぐに伸びる車道を明るい緑で彩るイチョウ並木の向こうに、堂々とした石造りの門扉と鉄製の黒いゲートが見えてきた。近づくにつれて、その家の――というより、一臣の言葉通り屋敷の――様子が見えてくる。それは青空を背景にした白い壁面の石が美しい洋館で、周囲を菜々の背丈よりも高い生け垣で囲われている。その鮮やかな緑が一階部分を目隠ししていて、気品というよりは、気楽な気持ちでふらりと訪ねて来られないような厳格さを感じさせるたたずまいの豪邸だ。

(うわぁ、なんて大きな敷地なの)