菜々の問いかけに一臣が答える。
「住所を教えていただければ、運転手と一緒にご自宅にお迎えに上がります」
「あ、えっと……」
今夜は永輝の部屋に泊まることにしている。祖父の容態が悪いときに恋人の家に泊まると知れば、一臣は――そしてもし彼から話を聞けば、祖父も――菜々のことを冷たい娘だと思うかもしれない。それでも、こんなにも気持ちが不安に揺れ動く今、一人でいるのは耐えられない。
「大丈夫です。一人で行けます」
「そうですか。わかりました。では、明日の朝、五時四十五分に」
一臣が腰を上げようとしたので、菜々はあわてて引き留めた。
「あの、念のため、祖父の連絡先を教えてもらえませんか?」
「連絡先?」
「はい。これから何か連絡を取りたいときが出てくるかもしれませんから」
「それもそうですね。では、社長宅の住所と電話番号をお渡ししましょう」
一臣は自分の名刺の裏にさらさらと書き留め、それを菜々に差し出した。
「ありがとうございます」
後で見ようと、菜々は名刺をローテーブルの隅に置いた。
「いえ、では今日はこれで」
一臣がそう言って腰を上げた。菜々も立ち上がって先に休憩室のドアを開けようとしたが、大股でドアに歩み寄った一臣が、ドアを開けて菜々を通してくれた。
「ありがとうございます」
菜々は礼を言って一臣とともにバーに戻った。永輝が心配そうに菜々を見たが、そんな彼の様子を一臣がチラリと見てから、上体を傾けて菜々の耳に唇を寄せた。
「明日、絶対に来てください。待っていますから」
男性に至近距離でささやかれて、菜々は緊張しながら小さくうなずいた。
「住所を教えていただければ、運転手と一緒にご自宅にお迎えに上がります」
「あ、えっと……」
今夜は永輝の部屋に泊まることにしている。祖父の容態が悪いときに恋人の家に泊まると知れば、一臣は――そしてもし彼から話を聞けば、祖父も――菜々のことを冷たい娘だと思うかもしれない。それでも、こんなにも気持ちが不安に揺れ動く今、一人でいるのは耐えられない。
「大丈夫です。一人で行けます」
「そうですか。わかりました。では、明日の朝、五時四十五分に」
一臣が腰を上げようとしたので、菜々はあわてて引き留めた。
「あの、念のため、祖父の連絡先を教えてもらえませんか?」
「連絡先?」
「はい。これから何か連絡を取りたいときが出てくるかもしれませんから」
「それもそうですね。では、社長宅の住所と電話番号をお渡ししましょう」
一臣は自分の名刺の裏にさらさらと書き留め、それを菜々に差し出した。
「ありがとうございます」
後で見ようと、菜々は名刺をローテーブルの隅に置いた。
「いえ、では今日はこれで」
一臣がそう言って腰を上げた。菜々も立ち上がって先に休憩室のドアを開けようとしたが、大股でドアに歩み寄った一臣が、ドアを開けて菜々を通してくれた。
「ありがとうございます」
菜々は礼を言って一臣とともにバーに戻った。永輝が心配そうに菜々を見たが、そんな彼の様子を一臣がチラリと見てから、上体を傾けて菜々の耳に唇を寄せた。
「明日、絶対に来てください。待っていますから」
男性に至近距離でささやかれて、菜々は緊張しながら小さくうなずいた。


