菜々はソファを勧めてから部屋を出ようとしたが、一臣に引き留められた。
「いいえ、結構です。早く菜々様、あなたと話がしたい」
菜々は落ち着かない気分で一臣と向かい合ってソファに腰を下ろした。
「あのぅ、その〝菜々様〟というのはやめてもらえませんか? なんだか落ち着きません」
「そうですか、あなたがそうおっしゃるならやめます」
「ありがとうございます」
菜々は膝の上で両手を握って続ける。
「それで、あの、和倉さんがおっしゃった通り、私の両親は駆け落ちしたんです。なので、私は祖父母のことはほとんど……というよりまったく知らないんですが……」
「さっきもお話しした通りです。葛葉社長に結婚を反対された佐百合様は斎城さんと駆け落ちされた。一度、娘が生まれたので会ってほしいという手紙が葛葉社長に届いたのですが、社長は当時、まだ怒りが収っておらず、写真を破り捨ててしまわれました。ただ、斎城菜々という名前だけは覚えておられたんです」
「でも、それが本当なら、今頃どうして……」
「社長は二年前の土砂災害のニュースを見たとき、犠牲者の名前の中に斎城圭一と佐百合という名前を見つけたんです。それで、残された娘を探そうと、二人が災害に巻き込まれた県を中心に探しましたが、見つかりませんでした。転居を繰り返されていたため現住所までたどり着けず、これといった手がかりもなく……。けれど昨晩、調査担当者がサウス・オオサカ・マガジンに菜々さんの名前を見つけたんです」
「いいえ、結構です。早く菜々様、あなたと話がしたい」
菜々は落ち着かない気分で一臣と向かい合ってソファに腰を下ろした。
「あのぅ、その〝菜々様〟というのはやめてもらえませんか? なんだか落ち着きません」
「そうですか、あなたがそうおっしゃるならやめます」
「ありがとうございます」
菜々は膝の上で両手を握って続ける。
「それで、あの、和倉さんがおっしゃった通り、私の両親は駆け落ちしたんです。なので、私は祖父母のことはほとんど……というよりまったく知らないんですが……」
「さっきもお話しした通りです。葛葉社長に結婚を反対された佐百合様は斎城さんと駆け落ちされた。一度、娘が生まれたので会ってほしいという手紙が葛葉社長に届いたのですが、社長は当時、まだ怒りが収っておらず、写真を破り捨ててしまわれました。ただ、斎城菜々という名前だけは覚えておられたんです」
「でも、それが本当なら、今頃どうして……」
「社長は二年前の土砂災害のニュースを見たとき、犠牲者の名前の中に斎城圭一と佐百合という名前を見つけたんです。それで、残された娘を探そうと、二人が災害に巻き込まれた県を中心に探しましたが、見つかりませんでした。転居を繰り返されていたため現住所までたどり着けず、これといった手がかりもなく……。けれど昨晩、調査担当者がサウス・オオサカ・マガジンに菜々さんの名前を見つけたんです」


