蟲狩り少女

☆☆☆

リビングには今4つのカップから湯気が上がっている。


甘い香りが漂っているが、その空気はやはり張りつめたものだった。


ただ1人、清野カナを除いては皆厳しい表情をしている。


「いい家ですね」


清野カナはそう言いリビングを見回す。


あたしとお母さんの私生活をのぞかれているような気分になり、あまり嬉しくない褒め言葉だ。


それとも、遠まわしに自分との暮らしと比べているのだろうか?


「母さん、何の用事なんだよ」


清野カナの言葉を無視し、光磨がそう言った。


「あなたの帰りが遅いから携帯電話のGPSで居場所を調べたのよ。


そしたらずっと同じ場所にいるじゃない。蟲狩りの事でなにかあったのかと思って来てみたのよ。」


清野カナはそこまで光磨へ向けてい言い、次の言葉はお母さんへ向けて口を開いた。


「ここまで来て表札を見てみたら、知っている名字だったんです。


クラスに里音ちゃんがいる事も光磨から聞いていたので、思わず尋ねてみたくなってしまって」