人を好きになるというのは、自分の日常生活にその人が入り込んでくるということだ。


そして好きな人はあたしの一部になっていく。


一挙一動が気にかかり、好きな人の態度1つで幸せにも不幸にもなる。


今のあたしは光磨の操り人形だった。


「ねぇ、里音ちゃん聞いてる?」


その声にハッと我に返ると、すでに校門を抜けたところだった。


いつの間に靴を履きかえたのかも、覚えていない。


リカちゃんの不安そうな顔があたしを覗き込んでいる。


「ご……ごめん。あんまり聞いてなかった」


「大丈夫? 具合悪いの?」


「ううん。平気だよ」


あたしはそう言い、笑顔を作った。


恋の病。


永遠に叶う事のない恋の病。


なんて、いえるワケがない。