「うめーよ。腹壊すどころか、足りねーくらいだってのっ」
好きな人にこんな言葉を言われて、喜ばない人がどこにいるかな?
あたし、今どんな表情してるんだろう。目は真ん丸?顔は真っ赤っか?
「よしっ、帰るか」
「えっ」
「駅まで一緒だろ?快二はいないけど、一緒帰ろっか」
正門へ足を進めながら志摩が言う。そんな志摩の姿を見て、胸がときめかないはずがない。
「い、一緒に帰ってもいいよーだ!」
そして、また……素直になれるはずもない。
「志摩」
「ん?」
校舎をあとにして、ドキドキを隠しながら志摩と並んで歩いていた時に、あたしは志摩の名前を呼んだ。
「野球部残念……だったね。でも、お疲れ様」
マネージャーお疲れ様。その意味も込めて志摩へ伝えた。
「うん。ありがとうな」
あたしの目を見ないで、まっすぐ前を見たままそう言った志摩。その横顔はどこか切なそうに見える。


