「勝つって難しいんだね」
「当たり前だっての」
「泣いたの?」
「……デリカシーのないこと聞くな」
やっぱり泣いたんだね。
「おーい、遅くなってごめん!」
そこへ志摩の声がして、あたしの胸は急速に加速し始める。
「うっし。俺は帰るとするか」
「え!快二帰んの!?」
立ち上がる快二を見上げる。
「おう。コレのお礼ってことで」
渡したシフォンケーキをぶらつかせる快二。
「ちょっ、ちょっと待って!もう少しいてよっ。志摩と2人って緊張して、何話せばいいか……」
「じゃっ、そういうことで!」
そう言って、あたしに背を向けて歩き出した快二。
「ちょっ、快二!」
本当に帰っちゃう感じ!?どうしよっ、あたし志摩と2人きりになっちゃうじゃん!?あたしの心臓はさらにパニックを起こす。
「…………ったく、今日だけだからな」
もちろん、そんな快二の思いも知らないで。


