「ん?何か言ったか?」
「言った。アンタ元気そうだって」
「なんで?」
「ほら、試合負けたって言ってたじゃん」
“俺達負けたんだわー。いやー惜しかった”
朝、電車の中で、あたしの目を見ないでそう言った快二。その時は何とも思わなかったけど、改めて考えると落ち込んでたのかもって思ってさ。
口悪いし何かとウザ絡みするし、快二のことはあんまり好意的に思っていない。だけど……
「ピッチャー、お疲れ様」
これくらいは言っておこうかなって思った。励ましとかじゃなくて、あたしの素直な気持ちなんだ。
「…………あーうん」
でも、快二からの返事はそれだけだった。いつもの反撃がないのが変な感じだったけど、今日は何も触れないでおこう。
「そのシフォンケーキね」
「城薗」
あたしの話は快二の声で遮られる。
「な、なに?」
「やっぱり負けんのはキツいなー」
自分の足元を見たまま言う快二。


