結局、それから点が入ることはなく、聖堂の勝利となった。
「夏の予選では絶対に勝ちます。上まで残っててくださいね」
「俺達も気を抜かないで、戦えることを楽しみにしています」
聖堂のピッチャーと握手をして交わした言葉。
相手が3年生であろうと、実力でも負けていようと、夏の大会では負けてたまるか。
「集合!」
グラウンド整備を終えた後、監督から声がかかり、部員全員が円になる。
「今日の練習試合、お疲れ様。結果はうちの負けだった。さすが聖堂だな。力の差、技術の差、改めて俺も見せつけられたよ」
俺の親父くらいの歳の監督。被っている帽子の隙間から、白髪混じりの髪が見える。
そして、少し視線を落として話していた監督が、目線を俺達に合わせる。
「だけど、今日の練習試合で負けてよかった。勝っていたら、今後の試合で、絶対に余裕が出てくるだろうしな」
「「はいっ」」


