「だからもう少し前から……そうだな。城薗さんがいたらちょっとでも近くに行きたくなんだろ?それ意識してみたらいいかもしんねー」
「おい、今なんかおかしかったぞ?例えでなんでアイツ出すんだよ」
「その方が分かりやすいでしょ?」
……うっ、否定できねぇ。
コイツの情報収集力は結構なもんで、アドバイスの時にも何かと痛いところを突いてくる。先輩達には柔らかめに言うように気がけてんだとか。
「はい、俺からの伝達は終わり!」
でも、このアドバイスが試合で活きてくるから、すげぇ奴だなって思ってしまうんだ。
「ストライク、三振!スリーアウトチェンジ!」
9回表、准のアドバイスが効いたのか、俺は打たれることなく三振を奪うことが出来た。
次は俺達の攻撃の番。打順は……あ、俺からだ。
バットを取り、バッターボックスへ向かう。試合でなくても緊張するわけで、俺の胸はドキドキ慌ただしい。
そして、小さな期待を込めて、一瞬だけ城薗のいる場所を見た。


