……超ムカつくけど、集中しねーと。
河辺先輩からのサインはスライダー。小さく頷いた俺は、手に持つ白球に力を込め、先輩のもとへ投げた。
「ボール!」
ちっ。城薗のせいで、いいコース入んなかったじゃねぇか。
俺が渋い顔をしていたからだろうか。河辺先輩からガッツポーズのサインが来た。俺は帽子を取り一礼して、白球を受け取る。
目を閉じて一度深呼吸をする。少しだけ気持ちが落ち着いた俺は目を開け、再度持ち場へ移動した。
「お疲れ様です!」
ベンチへ戻った俺達へ、准からかけられたこの言葉も、今日はもう何度目だろう。
試合は終盤。
先制点は俺達だったけど、現在は2―1で聖堂がリードしている状況だ。
ホームランこそまだ許してねぇけど、序盤に比べると打たれる率が高くなっていた。
「快二、少しずつバッターとの距離が遠くなってるから、ボールが届きにくくなってるのかも」
そこへ、准からのアドバイスタイム。


