あーあ。アイツの声が聞こえねぇっての。
そう思いながら、ピッチャーのグローブへめがけて白球を投げた。
「ストライークッ!」
まずはストレート。次は何のコースで攻めようか?キャッチャーの先輩の合図を受けて頷いた俺は、再度構えて白球を手放した。
「お疲れ様です!」
交代となり、ベンチに戻った。ベンチでは准や他の部員が迎えてくれる。
「なかなかいいコースだったじゃん。疲れはないか?」
准がボードを見せながら話す。
「まだ余裕。河辺先輩の煽り方が上手いし、俺の球も活きんのかも」
「そうだな」
キャッチャーの河辺先輩は、がたいのいい3年の先輩。
中学ではピッチャーだったらしいけど、高校ではキャッチャーのポジションを任されている。
本人の希望もあってのこと、らしい。バッティングセンスも抜群だし、俺がひそかに憧れている人なんだ。
「高橋~、お前さっきのスライダーだけど、少し高めだったぞ」
そこへ河辺先輩が登場。自然と背筋が伸びる。


