「彼女になったのに、“さん”付けとか嫌なんだけど」


彼女は、呼び名を気にしていたらしい。たしかに、俺……城薗さんって呼んでるかも。


「な、何て呼べば……?」


「まー、名前が嬉しい。ほら、前みたいに」


どうしよう、いじめたくなっちゃう。


「前っていつのこと?」


「し、志摩のくせにとぼけないでよっ。もういい!今の却下!土曜日のお弁当もなし!じゃあねっ!」


そのまま廊下をドスドスと歩き出した彼女。


「ちょっ、城ぞ……」


名前、名前……


「な、ななお!」


やべっ、名前間違った!?それに気づいた彼女は、勢いよく振り返る。


「彼女の名前を間違えるとかありえない!バカッ!」


彼女の怒りはMAX。


これはヤバイ、阻止せねば!


「ご、ごめんって」


「聞こえないっ。教室帰るからじゃあね!」


付き合って間もないのに、もうお別れの危険が漂ってるこの空間。


もう、嫌われた?


怪二に乗り換えられる!?


……そんなの、させねぇし。


絶対、譲らねーし。