「そういえばさ、志摩はどうだった?」
この名前も出してくんなよ、なんて少しばかり嫉妬してしまう。
「俺からは離れてたけど、結構早く帰って来ると思う」
「本当?志摩ってば、本当に50位以内で帰ってきたりしてね?」
俺も城薗もそれはないって思ってる。だけど、どこかでもしかしたらって考えが浮かぶ。
「今、何着まで帰って来てんの?」
「えっと、30位くらいかな」
そして、そのまま校庭の芝生で、ランナーの帰還を見届けることにした俺達。
40、45……准の姿はまだ見えない。
「次、50位だよ」
城薗が呟く。
城薗の両手は、胸の前で組まれている。准が50位で帰ってくることを祈っている証拠だ。
次、正門を走ってくる奴が志摩だったら……
「帰ってきたぞー!」
誰かの声に、俺は目を見張って正門を見た。
「…………志摩じゃないね」
城薗の小さな言葉に俺は頷く。
50位は、准じゃなかった。
准と俺の賭けは、俺の勝ちだ。
でも、全然嬉しくない。むしろ、モヤモヤする気持ちの方が大きかった。


