さっきまで身を切るように冷たい空気にさらされていたから、あったかい我が家の匂いが安心する。


 クリームの香りが玄関まで漂っていて、今日はシチューらしい。

部屋に戻らず、リビングで少し体を暖めてから。


 そう思ってリュウセイが消えた扉を開く。

だけど飛び込んできたのは、おいしそうな夕飯でもなく賑やかなテレビでもない。


 サラサラと流れるようなリュウセイの銀髪。

首筋に垂れるくらいの長さなのに、律儀にきゅっとうなじで結んでいる。


 いつも驚かせてばかりいるリュウセイ。

そんな彼が、ピタリとかたまっていた。



「リュウセイ…?」

 広くなってきた背中を通り越すように顔をひょっこり出すと、そこにはくつろぐようにソファに座る金髪の少年。


「よう、リュウセイ」

 ウェーブのかかった艶のある髪を揺らして、切れ長の瞳を細める。

リュウセイはカワイイ男の子だけど、彼はキレイな男の子だ。


「だ、誰……?」

 あたしが呟いたのもつかの間。


「ベティ……」


 またもや、よくわからない衣装をきたその彼に向かって、確かにリュウセイは呟いた。



「久しぶりだな」


 彼が口を開くたびに、リュウセイの身体が固まっていく。


こんな姿をみるのは初めてで、あたしはなんだか胸騒ぎがしていた―……。