「修一さん、私のこと好きですか? 私は修一さんの何ですか?」
「大事な彼女だよ」
耳元で囁かれた言葉に、興奮した私は少しだけ冷静さを取り戻す。
「それは確認しなきゃいけないこと?」
「私、不安なんです。修一さんとの関係やこれからのことが」
「何も心配いらないよ」
「なら、会社の噂を否定してくれますか?」
「……それは気にしなくていい」
即答せず、「うん」とも言ってくれないことに戸惑った。
修一さんは噂があることを知っていたみたいだ。なのに広まることも止めようとしない。
「どうして?」
「そんな噂すぐに消える」
「嫌なんです! 我慢できない! 私は……」
辛いんです!
涙が出てきて言葉に詰まった。修一さんは私の頭を撫でた。
「夏帆、くだらない噂は放っておけばいい。気にしたら疲れるだけだよ」
「噂を否定してくれようとしないんですね……」
修一さんは私を励ましているようでこの件から逃げている。そう思ってしまう言い方だ。
「夏帆はただの腰掛でしょ? 辞めるなら何言われたっていいじゃない」
「え?」
「早峰は結婚したらやめるんでしょ? 契約だし」
「いや、そんなつもりは……」
耳を疑う。今は契約社員でもいつか正社員になるつもりで頑張っていた。それを腰掛と思われているとは心外だった。
「もしさ、僕と結婚したら夏帆は家庭に入ってくれる?」
目を見開く。突然結婚という言葉を出されて戸惑う。
「えっと……修一さんはそう望むんですか?」
「うん。僕は奥さんには専業主婦になってもらいたいって思ってる。夏帆はそうじゃないの?」
「私……仕事を続けるつもりでした……」
契約でも会社に就職できたのだ。色んな思いがあって就活していた。辞めたいとは思わない。



