「分かりません……椎名さんの言う通り、私利用されてるのかな……」
「そんなこと言うなよ。夏帆ちゃんが幸せじゃないのは、振られた俺としては辛いな」
椎名さんは悲しそうな顔をした。
心の隅に初めて罪悪感が生まれた。
「夏帆ちゃん、前にも言ったけど気を遣わなくていい。頑張らなくてもいいんだよ」
椎名さんは手を伸ばして前に立つ私の手を取った。その行動に驚く余裕なんてなかった。それほど自然で不快感がない。
「嫌なら嫌って言った方がいい。横山さんは夏帆ちゃんの嫌がることなんてしないんでしょ?」
「…………」
私の手が椎名さんの手に包まれた。温かい感触に気持ちが落ち着いてきた。
「君には笑っていてほしいんだ」
そう言った優しい笑顔に心が揺れた。私を見上げる目だけは真剣だ。
「横山さんとちゃんと話すんだ。夏帆ちゃんの不満も悩みも受け止めてくれるから」
「はい……」
心が軽くなった。椎名さんと話して初めて前向きになれた。
いつもは意地悪なことを言うのに、今日の椎名さんは私に優しい。
「君の幸せを願ってるよ」
「っ……」
顔が赤くなる。冗談でも優しい言葉に照れてしまう。椎名さんのこういうとこ、女の子は弱いんだ。合コンの夜だって私が困っているときに助けてくれた。
「ありがとうございます……今日の椎名さんは優しい」
「今日のって……いつも優しいし」
私は笑った。椎名さんの前で笑顔になれた。
「今からキスしちゃうかもよ?」
意地悪な笑みを浮かべて私の手を軽く引っ張った。倉庫で無理矢理キスされそうになったことを思い出した。それでも、今の椎名さんはそんなことはしないって分かる。



