突然後ろの給湯室らしき部屋のドアが開き女性社員が三人も出てきた。
「あ、こんにちは」
目の前にいるのが俺だと気づくと三人はニコニコと話しかけてきた。またか、と溜め息をつきそうになるのを堪える。
「植物を新しいのに変えるんですね」
「はい、種類が変わるだけで気分も違いますから」
俺は機械のように同じ台詞を繰り返した。
静かに仕事をさせてほしい。早峰の社員は暇なのだろうか。
もう愛想振り撒くのはやめよう。誰かさんのように下を向いて目立たないよう地味に仕事してやろうか。
通路の角の向こうから足音が近づいてくる。俺も他の三人も話ながら何となく角を見た。
角を曲がってこちらに歩いてくるのは夏帆だった。
下を向いてぼーっとしている。俺たちが先にいるのに気づいたのか夏帆は顔を上げた。
その顔は今にも泣き出しそうで、不安で潰されそうな顔だった。
目の前にいるのが俺だと認識しただろう瞬間、夏帆は来た方向に慌てて戻って角を曲がった。
なんだ今の挙動不審な行動は?
「ねえねえ、今のって……」
「そう、あの子だよ噂の」
夏帆の姿を見ると三人は顔を見合わせてクスクス笑った。
「あの人がどうかされたんですか?」
俺は思わず聞いてしまった。今の夏帆の様子と噂のことを知りたかった。
「えっと……」
「今の子、うちの会社の人に付きまとってるらしいんです……」
は? 夏帆が?
「勝手にお弁当を作ってきて無理矢理押し付けてるみたいで」
「横山さんを会社の近くで待ち伏せしてるらしいよ」
「えー! 怖い!」
何だそれ……あの内気な夏帆がそんなことするはずがない。完全にデマだろう。



